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かやくせん

火薬船

海野 十三

Read 火薬船 (かやくせん) by 海野 十三 (うんのじゅうざ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 61,552 characters · 124 screens

Aozora Bunko

と、こわい眼で、ハルクを見た。

「さあ。わしはなんにも知りませんが、今雑草園へ入っていった旦那に、このステッキをわたしてくれと、たのまれましたのです」

「ふーん、それをたのんだのは何者か」

「さあ、わしの知らない人ですが、どうやらそのすじの人らしい……」

「よし、わかった。もう後をいうな。ステッキをこっちへよこせ」

ハルクは、フランス語をすこししゃべる。それをノルマンが利用して、この芝居をやらせているわけだった。

ハルクとしては、めいわくこのうえもないが、まさか相手が、土地の警部であり、そしてハルク自身が今殺人に取り懸っているなどとは知らない。一方、警部モロはモロで、ハルクのことを本部からの連絡密使であると、かんちがいをしてしまった。

黒いステッキのあたまが、モロの方へさしだされた。ハルクは、そのステッキの根元をもって、さしだしたのであるが、それもノルマンからいわれたとおりにした。すると、彼の手は、釦をおさえたことになる。とたんに、ステッキの蓋が、ぱちりとあいた。その瞬間ステッキがにゅっと伸びたように見えた。

「あっ、あッッ!」

それが警部モロの最後のこえだった。