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とうみょうのまき
灯明之巻
泉 鏡花
Read 灯明之巻 (とうみょうのまき) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 23,444 characters · 47 screens
」
あいにく留守だが、そこは雲水、風の加減で、ふわりと帰る事もあろう。
「まあ一服さっせえまし、和尚様とは親類づきあい、渋茶をいれて進ぜますで。」
とにかく、いい人に逢った。爺さんは、旧藩士ででもあんなさるかと聞くと、
「孫八とこいて、いやはや、若い時から、やくざでがしての。縁は異なもの、はッはッはッ。お前様、曾祖父様や、祖父様の背戸畑で、落穂を拾った事もあんべい。――鼠棚捜いて麦こがしでも進ぜますだ。」
ともなわれて庫裡に居る――奥州片原の土地の名も、この荒寺では、鼠棚がふさわしい。いたずらものが勝手に出入りをしそうな虫くい棚の上に、さっきから古木魚が一つあった。音も、形も馴染のものだが、仏具だから、俗家の小県は幼いいたずら時にもまだ持って見たことがない。手頃なのは大抵想像は付くけれども、かこみほとんど二尺、これだけの大きさだと、どのくらい重量があろうか。普通は、本堂に、香華の花と、香の匂と明滅する処に、章魚胡坐で構えていて、おどかして言えば、海坊主の坐禅のごとし。……辻の地蔵尊の涎掛をはぎ合わせたような蒲団が敷いてある。ところを、大木魚の下に、ヒヤリと目に涼しい、薄色の、一目見て紛う方なき女持ちの提紙入で。