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ばくやくのはなかご
爆薬の花籠
海野 十三
Read 爆薬の花籠 (ばくやくのはなかご) by 海野 十三 (うんのじゅうざ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 101,908 characters · 204 screens
全くもう一歩というところであった。あぶなかった。あぶなかった。
すると、房枝は、どうしたであろうか。両親のため国家のため、房枝は、爆薬の花籠と共に沼の中に身をおどらせ、そこに一命を終ろうとしたが、そのとき、ようやく追いついたスミ枝が、房枝のうしろから引き留めて彼女の一命を救った。そして籠だけを、沼の中になげこんだの、であるが、その花籠がついに不発に終ったことは、みなさんも既に御存じのとおりである。二人が、沼のそばにうち重なって、はあはあと息を切っているところへ、彦田博士夫婦も、ようやく駈けつけた。
「おお、房枝さん、いや、あたしの可愛いい小雪」
「お母さん」
「お父さんの方も、よんでおくれ」
房枝、いや彦田小雪は、右と左とから両親にとりすがられ、まるで夢を見てるとしか思われなかった。
もうこの世では望みのないと思っていた両親に、めぐりあえたのであった。いや、しかもその両親は、名実ともにじつにりっぱな両親であったことは、小雪の幸福であった。
小雪は、今は、もちろん両親のもとに、幸福に暮し、そして孝行に身をささげているが、仲のよかったスミ枝も、その妹として彦田博士の養女となり、同じ屋根の下に、思いがけないよろこびの日を送っているという。