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ねことしょうぞうとふたりのおんな
猫と庄造と二人のおんな
谷崎 潤一郎
Read 猫と庄造と二人のおんな (ねことしょうぞうとふたりのおんな) by 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 68,020 characters · 131 screens
「あのなあ、―――」
と云いながら、又戻って来た。
「塚本君、えらいお邪魔しまっけど、実はちょっと聞きたいことがおまんねん。」
「何だす?」
「僕これから、六甲まで行ってみたろか思いまんねんけど、………」
やっと一畳縫い終えたところで、立ち上りかけていた塚本は、
「何しにいな?」
と呆れた顔をして、かかえた畳をもう一遍トンと台へ戻した。
「そうかて、あれきりどないしてるやら、さっぱり様子分れしまへんさかいにな。………」
「君、そんなこと、真面目で云うてなはんのんか。置きなはれ、男らしいもない!」
「違いまんが、塚本君!………そうやあれへんが。」
「そやさかいに僕あの時にも念押したら、あの女に何の未練もない、顔見るだけでもケッタクソが悪い云いなはったやおまへんか。」
「ま、塚本君、待っとくなはれ! 品子のことやあれへんが。猫のことだんが。」
「何と、猫?―――」
塚本の眼元と口元に、突然ニッコリとほほ笑みが浮かんだ。
「ああ、猫のことだっか。」
「そうだんが。―――君あの時に、品子があれを可愛がるかどうか、ときどき様子見に行ってくれる云いなはったのん、覚えたはりまっしゃろ?」
「そんなこと云いましたかいな、何せ今年は、水害から此方えらい忙しおましたさかいに、―――」