Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
Read 獄中への手紙 (ごくちゅうへのてがみ) by 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 174,521 characters · 344 screens
シャガールは、ロマンティシズムにへばりついていて下らないけれど、彼の人生の一つの真実として、そういう感じに似て感銘だけはもっているのね、覚えていらっしゃるかしら、彼の誕生日という絵。しかしあれも、その初冬の夜の何の奇抜さもない奇蹟の美しさにくらべれば、つまりはこしらえものね、天井から翔んでふって来るのですものね、そのひとのところへ、花をもった女のひとが。
ああ、でも、どうして、あの崖のつるりとした坂道で、わたしがふと、こわがったのが、おわかりになったのでしょうね、どうして、あんなにすぐわかったのでしょうね。今年もやがて冬になり、あの坂道はやっぱり、すべりそうに違いないと思います。
十二日、くたびれて、こんなに間が途切れてしまいました。きのうの朝咲枝とび立って帰りました。子供のことは勿論ですが、あのひとにとってもうこっちの生活は、全くこしかけよ、まして今度はタンスも机も荷作りしてしまったのですから。あっちにある、自分が主人の机、餉台、家じゅう――つまり自分の生活へ、とび立って帰り、そのうれしさかくせず、わたしもどっかへ帰ってしまいたいわ、と、咲枝に台所で申しました。