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ごくちゅうへのてがみ
獄中への手紙
宮本 百合子
Read 獄中への手紙 (ごくちゅうへのてがみ) by 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 374,755 characters · 745 screens
でも、あっちを根城としておけばやれないこともないでしょう。勤人の多いアパートが同じならよい。学生の多いところはこまります。どうせいれば誰かということは分る。一つ構えの中でのお客が多かったりしては。生活というものは生きているから、居るところに生活があるわけですから、あっちこっちせず、そちらに大部分暮すにはそれだけの条件が入用ですから、よくしらべましょう、(ひさが来月に入ってかえって来たら)そういう生活をやって見るということには興味があります。人々の中での生活というところが。机だの何だの鍵のかかるのにしなければなりません。親かぎでいくらでもいないとき開けて入れるのですから。誰が入るか、それも分らない。そこがいやね。一人はだからいやね。一つの家なら其だけはないが。空巣のほか。一番いやなのはこのことと手紙のこと。
毛糸足袋のこと、底が切れた話。切れてよかったこと。去年まるで底がいたんでいないのを見て、その底を撫でつつ、ああと考えたことを思い出します。切れたというのはうれしい報知です。春は、皆工合がはっきりしません。一年のうち、この頃から八重桜のぼってりと咲く時分私は一番苦しい時です。