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らい
癩
島木 健作
Read 癩 (らい) by 島木 健作 (しまきけんさく) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 37,753 characters · 74 screens
朝なども彼の起きるよりもまだ早くぷいと家を出て、一日帰らないような日もあった。そういう生活がほぼ一と月もつづき、めっきりと寒くなった十一月のある日の朝、岡田は家を出たきり、ついに太田のもとへは帰って来なかったのである。――何か事情があるのだろうとは思ったが、ちょうどその日の朝、何のつもりか岡田はまだ寝ている太田の部屋の唐紙を開けて見て、何かものを言いたげにしたが、そこに一枚のうすい布団を、柏餅にして寝ている太田の姿を見ると、ほっ、と驚いたような声をあげてそのまま戸を閉めてしまった。――それはちょうど、二枚しかなかった布団の一枚を、寒くなったので岡田に貸したその翌日だったので、自分の柏餅の寝姿を見て、案外気立ての柔しそうな岡田のことゆえ、気の毒がって他所へ移ったのかも知れない、などとも太田には考えられるのであった。心がかりなので二、三日してから中村に逢って尋ねると、彼はすっかり合点して、「いや、いいんだ、今日あたり君に逢って話そうかと思っていたところだよ。奴も落ち着くところへ落ち着いたらしいんだ。長々ありがとう」というのであった。――一九二×年十一月、日本の党はようやくその巨大な姿を現わしかけ、大きな決意を抱いて帰った山本正雄こと岡田良造は、その重要な部署に着くために姿をかくしたのである。