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はっけっきゅう
白血球
豊島 与志雄
Read 白血球 (はっけっきゅう) by 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 11,538 characters · 24 screens
その間に一度、人知れずそっと女中部屋へはいってみたが、やはり何だか気持が変だった。昼食後彼は、二階の室にぼんやりして、うち晴れた大空を障子の硝子から眺めていた。これまでのことを考えるともなく考えてみると、馬鹿げているようでいて、そのくせ笑えもしなかった。自分でも思い迷った心地で、また大空をぼんやり透し眺めた。
そこへ、清が来訪者の名刺を持ってきた。○○署詰刑事中井宇平としてあった。晋作には何の用件だか更に見当がつかなかった。彼は暫く名刺の表を見つめていたが、兎も角もその刑事を通さした。
絣の銘仙の羽織着物に、セルの袴をつけた、三十五六の年配で、頭を五分刈にした、朴訥そうに見える男だった。晋作の頭には、その様子と刑事の肩書とが、別々なものとなって映じた。中井刑事は、一通りの挨拶を終ってから、突然の来訪を廻りくどい言葉で詫びた。語尾に妙な曇りがあった。晋作はその顔を見ながら、何の用件かと尋ねた。
「実はおかしなことで伺ったのですが…………。」
そして中井刑事は、丁寧な調子とぞんざいな調子とをつきまぜて云い出した。――晋作の家に怪しいことがあるという噂が拡まっている。