Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しろがねのえず
白金之絵図
泉 鏡花
Read 白金之絵図 (しろがねのえず) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 23,356 characters · 47 screens
と口とは反対、悄れた顔して、娘の方に目を遣って、
「貴女に道を尋ねました、あの日も、実は、そのお肝入り下さるお邸へ、打合せ申したい事があって罷出る処でござったよ。
時に、後月のその舞台は、ちょっと清書にいたし、方々の御内見に入れますので、世間晴れての勤めは、更めて来霜月の初旬、さるその日本の舞台に立つ筈でござる。が、剣も玉も下磨きこそ大事、やがては一拭いかけまするだけの事。先月の勤めに一方ならず苦労いたし、外を歩行くも、から脛を踏んでとぼつきます……と申すが、早や三十年近う過ぎました、老人が四十代、ただ一度、芝の舞台で、この釣狐の一役を、その時は家元、先代の名人がアドの猟人をば附合うてくれられた。それより中絶をしていますに因って、手馴れねば覚束ない、……この与五郎が、さて覚束のうては、余はいずれも若い人、まだ小児でござる。
折からにつけ忘れませぬは、亡き師匠、かつは昔勤めました舞台の可懐さに、あの日、その邸の用も首尾すまいて、芝の公園に参って、もみじ山のあたりを俳徊いたし、何とも涙に暮れました。帰りがけに、大門前の蕎麦屋で一酌傾け、思いの外の酔心に、フト思出しましたは、老人一人の姪がござる。