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はくはつき
白髪鬼
江戸川 乱歩
Read 白髪鬼 (はくはつき) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 112,046 characters · 224 screens
そこに、先祖代々の棺が安置してあるのだ。
と悟ると同時に、わしは、余りの恐ろしさに、ゾッと身震いした。もう駄目だ。とても二度と娑婆の光を見る望みはない。
棺は破って破れぬものでない。だが、この穴蔵は一人や二人の力では、絶対に破る見込みがないのだ。コンクリートの地下室同然の穴蔵が、どうして破れるものか。たった一つの入口は、厚い鉄扉でとざされ、外には頑丈な錠前がついている。
だが待てよ。若しかしたら、錠をおろすのを忘れていないとも限らぬぞ。
わしは、その扉を力の限り押し試みた。身体全体でぶつかって見た。だが、ゴーン、ゴーンと不気味な反響が起るばかりで、扉はビクともしない。やっぱり錠がおりているのだ。
望みは絶えた。
わしの一家に死人でもない限りは、五年、十年、或は二十年、この扉が開かれる見込みは絶えてない。
アア、神様、あんたは何というむごいことをなさるのだ。なぜわしを甦らせて下すったのだ。一度生かせて置いて、更らに殺しなおすお積りですか。死の苦しみを二度甞めさせてやろうという訳ですか。
しかも、今度の死は、崖から落ちる様な楽なものではない。飢え死だ、ジリジリと、一分ずつ、一寸ずつ、命をけずられるのだ。