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まどにさすかげ
窓にさす影
豊島 与志雄
Read 窓にさす影 (まどにさすかげ) by 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 13,068 characters · 26 screens
怪しいものが来てるようでもあった。犬は低くうーと唸ったり、また声高く吠えたりした。一時すっかり鳴き止んで、静かになったが、暫くすると、また鳴きだした。それから、ひっそりとなってしまった。
しいんとした中で、雨戸にことりと音がした。時を置いて、何度も音がした。風もないのに、どうしたのだろう。一つ所ではなく、あちこちで、雨戸にことりと音がした。それからまた、犬が吠えだした。
私は二ワットの小さな電球をつけて寝ていたが、その光りが妙に明る過ぎた。不用心な気がして、電燈を消した。真暗になった。
瞼のうちに、祖母のことが浮んできた。元気だった時の姿は少しも浮ばず、羽二重の白無垢を着せられてる寝姿だけだった。白木綿の顔覆いを取ってみると、白髪に縁取られてる顔は、鼻だけがつんと高くて、細そりと引き緊り、それが蝋細工のようで、更に、眼に見えないほど薄い紗か何かで被われてる感じだった。体も手足も薄っぺらで、蒲団の厚みの中に埋もれきって、そこに人が寝てるとは見えなかった。
それだけ覚えていて、あとはうとうと眠ったらしい。そして朝早く眼をさました。
起き上って窓の雨戸を開くと、朝日の光りが空に流れていた。