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「もん」

「紋」

黒島 伝治

Read 「紋」 (「もん」) by 黒島 伝治 (くろしまでんじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 4,739 characters · 10 screens

Aozora Bunko

」ある時、畠から帰りかけた、地主の家の騒ぎを聞いてきて、じいさんは、ばあさんに云った。

「そうかいんの、……あれはどこイ行たんかしらん……チョチョチョ。」ばあさんは猫を呼んでみた。すると、どこからか、悄々(しお/\)として「紋」が出てきた。

「われゃ、どこに居ったんぞ?」

そうしているところへ、地主の下男が、喰い殺された雛の脚をさげてやってきた。

「お前んとこの猫は、こら、こんなに雛を喰い殺してしまいやがった!」と下男は、雛をばあさんの顔さきへ突きつけた。

「それゃ、まあ、すまんこって……」

「おどれが、こんな所で、のこのこ這いよりくさる!」下男は猫を見ると、素早く、礫を拾って投げつけた。不意に飛んできた礫に驚いて猫は三四間走ってから、下男を振り返って見て、物乞いするようにないた。

「おどれが!」再び下男は礫を投げつけた。

「この頃は、盗を働いて、鼠の番もせんせに、大分納屋の麦を鼠に食われよる。」じいさんは、晩飯を食ってから、煙草に火をつけながら云った。

「もう俵に孔でも開けとるかよ?」

「うむ。……俵のまわりは鼠の糞だらけじゃ。こんなことじゃ毎晩五合位い食われようことイ。