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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
Read 細雪 (ささめゆき) by 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 226,715 characters · 431 screens
と、真っ黒な顔に金歯を光らせながら云った。
「違いまんが。これから大いに儲けよう云うところだんが」
「何ぞええことがおまんのんか」
「僕、今月中に北支へ行きまんねん。実は妹が天津のダンスホールに出てましたら、軍部に見込まれてスパイになりましてん。―――」
「ほうお、―――」
「そして今では支那浪人の奥さんになりおって、えらい羽振りがようて、時々国元へ千円二千円と送って来まんねん。―――」
「ハテな、僕にもそう云う妹がないもんか知らん」
「―――その妹が、今頃内地でボヤボヤしてることあれへん、ボロい仕事が何ぼでもあるよって天津へ来なはれ、云うてくれてまんねん」
「僕も一緒に連れて行っとくなはれ、都合で大工いつでも止めまっせ」
「僕、儲かることやったら何でもやったろうと思うてまんねん。おやま屋の親仁でも構めしめへん」
「そうだそうだ、それぐらいの勇気がなかったらあきまへんで」
塚田はそれから、
「お春どん、そのお銚子此方へおくなはれ」
と、お春を前に引き寄せて飲み始めた。この棟梁は蘆屋の家で一本付けて貰う時にも、お春のお酌で陶然となって、なあお春どん、あんた僕の奥さんになっとくなはれ、あんたが承知してくれはったら、今直ぐにでも内の奴に出て貰いまっせ、いや、冗談と違いまっせ、ほんまだっせと、口説くのが常であったが、お春が愛想よくあしらい