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はだいろのつき
肌色の月
久生 十蘭
Read 肌色の月 (はだいろのつき) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 50,706 characters · 101 screens
傍にいてあげられればいいのですが、病院の仕事があるので、私は夕方までに東京へ帰らなくてはなりません……母はあなたをロッジへ入れないなんて、愚にもつかないことをいっていますが、気になさらないで、ロッジで今日一日静かにしていらして、いい頃にお帰りになるように」
言い憎そうに眼を伏せ、
「おしつけがましいのですが、今朝のようなことはしないと約束していただきたいのです。さもないと、私は東京へ帰ることができません。それでは困るから……」
と、つぶやくようにいった。
ロッジの二階の大池の部屋に運びあげられると、加藤主任がやってきて、そばの椅子に掛けた。
「やっと人間らしい顔色になった。一時は、だめかと思ったんだが」
はじめからこんな調子でやってくれたら、逆らうことはなかったのだ。久美子は愛想よく微笑してみせた。
「なんのつもりで、呼吸のとまるまで水にもぐったりするんだ? 人騒がせにもほどがある。なにをしようと勝手だが、捜査の邪魔をすることだけは、やめてもらいたいね」
「はずみでやったことなんだけど……お手数をかけました」
「君には手を焼いた。とても面倒は見きれないから、さっさと、どこへでも行ってくれ」