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しばいきょうぼうけん
芝居狂冒険
夢野 久作
Read 芝居狂冒険 (しばいきょうぼうけん) by 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 10,334 characters · 21 screens
やっとわかった二三人が、男に飛付いた。メチャメチャに殴り付けた。
そこへ二三人の警官が、質屋の娘と一所に駈付けた。銀金具の鳶口(とびぐち)を持った親方も遣って来た。
警官は万平の顔に懐中電燈を突付けるとプッと噴出(ふきだ)した。
「何だ貴様は、最前の気違いじゃないか」
万平はハダカった胸を繕(つくろ)って腕マクリをした。まだ昂奮しているらしく奮然と詰寄った。
「……ナ……何が気違(きちげ)えだ。憚(はばか)んながら……」
親方が万平を遮り止めて睨み付けた。
「馬鹿……手前(てめえ)の風態(ざま)を見ろ……気違(きちげ)えでなけあ何だ……」
皆、可笑(おか)しさを我慢していた。
やっと月が出かかってそこいら中が明るくなって来た。背後(うしろ)の方で粂公(くめこう)が太いタメ息を吐(つ)いた。
「ナアンデエ。やっぱり万公か。俺(おら)あ動物園の熊が逃げて来たんかと思った」
皆ゲラゲラと笑い出した。
警官は男に手錠をかけた。材木の下からタイルの褌包みと短刀を拾い出した。親方と、万平と、娘を連れて警察へ帰った。直ぐに丸柿質店へ電話をかけた。
俎橋(まないたばし)の警察に駈付けて来た禿頭(とくとう)の丸柿親爺(おやじ)は、娘の無事な顔を見ると泣いて喜んだが、手錠をかけられた男を見ると血相を変えて掴みかかろうとした。