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はなよい
花宵
山本 周五郎
Read 花宵 (はなよい) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 8,938 characters · 18 screens
「こんどはこっちから打ち込むぞ」と云いさま、えいと叫んで踏みだし、はげしい力で下からはねあげた、英三郎の木剣は咲きほこる桜の花のなかへはねとび、ぱっと雪のようにはなびらを散らせながら遠くのほうへ落ちた。
「……まいった」英三郎が茫然として叫ぶと、
「まだまだ、こんどは組み打ちだ」と云いながら、清之助は木剣を投げだしてとびついて来た。
「まいった、兄上わたくしの負けです」
「なに勝負はこれからだ、えい、そら元気で来い」
「もういやです」振り放そうとするのを、清之助は構わずひっ組んで投げ、ぐっと馬乗りになると、
「源平須磨の浦の戦だ、おれは熊谷の次郎直実、おまえは無官の太夫敦盛だ。いいか、こう組み伏せたら動けまい」
「……まいった」
「まて、いま首級をあげるところだ、えい」清之助は右手で首を掻く真似をすると、ようやく弟の上からとび退き、「敦盛を討ちとったぞ」と大ごえに名乗りをあげた。英三郎はすぐにはね起きた。そしてからだについた泥を払おうともせず、まっすぐに駆けだしていって広縁へあがり、自分の居間へはいったと思うと、すぐに刀を持ってとびだして来た。するとそのようすを見ていたのであろう。