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きのこのまいひめ
茸の舞姫
泉 鏡花
Read 茸の舞姫 (きのこのまいひめ) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 11,906 characters · 24 screens
渠等は、すっと来て通り際に、従七位の神官の姿を見て、黙って、言い合せたように、音の無い草鞋を留めた。
この行燈で、巣に搦んだいろいろの虫は、空蝉のその羅の柳条目に見えた。灯に蛾よりも鮮明である。
但し異形な山伏の、天狗、般若、狐も見えた。が、一際色は、杢若の鼻の頭で、
「えら美しい衣服じゃろがな。」
と蠢かいて言った処は、青竹二本に渡したにつけても、魔道における七夕の貸小袖という趣である。
従七位の摂理の太夫は、黒痘痕の皺を歪めて、苦笑して、
「白痴が。今にはじめぬ事じゃが、まずこれが衣類ともせい……どこの棒杭がこれを着るよ。余りの事ゆえ尋ねるが、おのれとても、氏子の一人じゃ、こう訊くのも、氏神様の、」
と厳に袖に笏を立てて、
「恐多いが、思召じゃとそう思え。誰が、着るよ、この白痴、蜘蛛の巣を。」
「綺麗なのう、若い婦人じゃい。」
「何。」
「綺麗な若い婦人は、お姫様じゃろがい、そのお姫様が着さっしゃるよ。」
「天井か、縁の下か、そんなものがどこに居る?」
と従七位はまた苦い顔。
七
杢若は筵の上から、古綿を啣えたような唇を仰向けに反らして、
「あんな事を言って、従七位様、天井や縁の下にお姫様が居るものかよ。