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がもううじさと
蒲生氏郷
幸田 露伴
Read 蒲生氏郷 (がもううじさと) by 幸田 露伴 (こうだろはん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 65,772 characters · 128 screens
其時将軍の扈従の臣の内藤外記が支え立てして、御主人役に一応御試み候え、と云った。すると政宗は大に怒って、それがし既にかく老いて、今さら何で天下を心掛きょうず、天下に心を掛けしは二十余年もの昔、其時にだに人に毒を飼う如ききたなき所存は有たず、と云い放った。それで秀忠が笑って外記の為に挨拶が有って其儘に済んだ、という事がある。政宗の答は胸が透くように立派で、外記は甚だ不面目であったが、外記だとて一手さきが見えるほどの男ならば政宗が此の位の返辞をするのは分らぬでもあるまいに、何で斯様なことを云ったろう。それは全く将軍を思う余りの過慮から出たに相違無いが、見す見す振飛ばされると分ってながら一ト押し押して見たところに、外記は外記だけの所存が有ったのであろう。政宗と家康と馬の合ったように氏郷と仲の好かった前田利家は、温厚にして長者の風のあった人で、敵の少い人ではあったが、それでも最上の伊白という鍼医の為に健康を危うくされて、老臣の村井豊後の警告により心づいて之を遠ざけた、という談がある。毒によらず鍼によらず、陰密に人を除こうとするが如きことは有り内の世で、最も名高いのは加藤清正毒饅頭一件だが、それ等の談は皆虚誕であるとしても、各自が他を疑い且つ自ら警め備えたことは普く存した事実であった。