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かにこうせん
蟹工船
小林 多喜二
Read 蟹工船 (かにこうせん) by 小林 多喜二 (こばやしたきじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 61,890 characters · 125 screens
何台というトロッコがガスの圧力で、眼の前を空のマッチ箱よりも軽くフッ飛んで行った。それッ切り分らなかった。どの位経ったか、自分のうなった声で眼が開いた。監督や工夫が爆発が他へ及ばないように、坑道に壁を作っていた。彼はその時壁の後から、助ければ助けることの出来る炭坑夫の、一度聞いたら心に縫い込まれでもするように、決して忘れることの出来ない、救いを求める声を「ハッキリ」聞いた。――彼は急に立ち上ると、気が狂ったように、
「駄目だ、駄目だ!」と皆の中に飛びこんで、叫びだした。(彼は前の時は、自分でその壁を作ったことがあった。そのときは何んでもなかったのだったが)
「馬鹿野郎! ここさ火でも移ってみろ、大損だ」
だが、だんだん声の低くなって行くのが分るではないか! 彼は何を思ったのか、手を振ったり、わめいたりして、無茶苦茶に坑道を走り出した。何度ものめったり、坑木に額を打ちつけた。全身ドロと血まみれになった。途中、トロッコの枕木につまずいて、巴投げにでもされたように、レールの上にたたきつけられて、又気を失ってしまった。
その事を聞いていた若い漁夫は、
「さあ、ここだってそう大して変らないが……」