Japanese reading practice

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ちまんだらしちょうぶし

血曼陀羅紙帳武士

国枝 史郎

Read 血曼陀羅紙帳武士 (ちまんだらしちょうぶし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 88,970 characters · 176 screens

Aozora Bunko

……何んといって蛙が啼いて死んだかご存知?」

「知るわけはござらぬよ」

「『久太アー』と啼いて死んだそうでございます」

「あッはッはッ」と左門は、爆笑した。「『キューター』……あッはッはッ」

爆笑してから、ハッと気がついた。

(俺は幾年ぶりで、気持ちよく、腹の底から、何んの蟠りもなく、笑っただろう?)

そうして、彼の気持ちは、快く爆笑させてくれた栞に対して、感謝しなければならないようなものになっていた。

(妾、どうして今日は、こう何んでも、気安く思うことが云えるのだろう?)

と、栞は栞で、自分ながらその事が、不思議なような気がした。(やはり、お父様のご病気がお癒りになったからだわ。……そうして、頼母様が、今日あたり、帰っておいでになるからだわ)

――それに相違なかった。それだから、心が喜悦に充ちてい、何んでも云え、何んでも受け入れることが出来、何んでもよい方へ解釈することが出来るのであった。

また二人は、しばらく沈黙して、向かい合っていた。

左門は、いつか、肘を枕にして横になった。

蕾を持った春蘭が、顔の前に生えていて、葉の隙から栞の姿が、簾越しの女のように見えていた。