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はだかぎ
裸木
豊島 与志雄
Read 裸木 (はだかぎ) by 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 16,049 characters · 33 screens
「よし、僕がついててやる。何でもないさ。」
佐野は枕頭に坐りこんだ。
「いけませんよ。大きな声をなすっちゃ……。」
敏子は立上って、電燈の覆いをした。
「ほんとに、もう宜しいんですから、お寝みなすって下さい。」
「ええ。」
武田は中腰にぼんやりしていた。
「みんな寝ておしまいよ。僕がついててやるから。」
佐野は両腕を組んで構えこんだ。火鉢に湯気が立っていた。黒紗にこされた光が、柔かな暈を室全体に投げていた。子供の呼吸は静かだった。
佐野は次第に気持が白けていった。何だかばかばかしくなった。
彼は室の隅に布団を拡げて横になった。そして眠ってしまった。何にも覚えなかった……。
翌朝、彼は敏子から呼び起された。ちゃんと毛布をかけて寝てるのだった。室の戸は開け放されて、晴れやかな朝日がさしていた。
子供は大きなきょとんとした眼で、不思議そうに天井を見廻していた。熱が三十七度近くに下っていた。
「昨夜眠ったのは、あなたと女中だけですよ。」
「賢い者はよく眠るさ。」
彼は腹匐いになって、子供の柔かな頬辺をつっ突いてみた。金色に透いて見える細やかな産毛に被われた皮膚が、無心にひくひくと動いた。