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おどるちへいせん
踊る地平線(下)
谷 譲次
Read 踊る地平線(下) (おどるちへいせん) by 谷 譲次 (たにじょうじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,823 characters · 283 screens
雑音を衝いて破裂する奇声、濁声。
4・PM。
じっとしていても汗ばむ太陽の赤光だ。
満場に横溢する力づよいざわめき。
切符の番号と見較べて席をさがす人々。
蒼穹に林立する赤と黄の国旗。
てらららんらんの闘牛楽。
誰からともなく唄い出す「海賊歌」の合唱。
男の円套と原始的な女装の点綴。
情熱と忘我と、above all, 太陽――SI! 闘牛はいま始まろうとしている。
下の演技場は一めんの砂だ。
そこに、深紅の農民服を着た人足たち――と言っても、これはみんな名ある闘牛士の下っ端弟子で、若いのばかりか、なかには白髪頭のお爺さんもいる。野郎、これで一杯呑って来い、なんかと時々親方が投げてくれる金銭で衣食している連中――が、開始前、手に手に箒を持って、中央の大円庭に砂を均している。
見わたす限りの人の顔の壁に、ところどころ派手な色彩が動くのは、吉例により、貴婦人達が扇を使っているのだ。何という西班牙らしい軽さ! 異国さ! その怪鳥の羽ばたきのような、妙に柔かいグロテスクなひびき! これは何ものでもない。Spain Herself の音だ。おまけに、あおぎ方がまた西班牙だけによほど変ってて、まず最初おもてを見せて二、三回ひらひらあおぐと、つぎに、ひょいと器用に持ち更えて、今度は裏を出す。