Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

じゅうきちひょうりゅうきぶん

重吉漂流紀聞

久生 十蘭

Read 重吉漂流紀聞 (じゅうきちひょうりゅうきぶん) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 26,456 characters · 52 screens

Aozora Bunko

「ああ、なんということだ」

と叫びながら自分の部屋へ走りこみ、頭を抱えて寝棚に倒れた。

船頭の長右衛門が病いついたおかげで、思いもかけぬ仮船頭をうけたまわることになったが、わずか五日ほどで舵を折ってしまった。それから七百余日、話にも聞いたことのないような難船をつづけ、それで死にでもするどころか、最後まで生残り、辛苦のありたけを※(「舌+低のつくり」、第3水準1-90-58)めつくした末、頼母しいかぎりの大船に救われ、やれやれと思う間もなく、頼みに思うその大船がまたぞろ舵を折って流れだすという。前世でどんな悪業を積み、こうまでの咎を受けるのかと、やるせない思いに沈んでいると、半兵衛と音七が這いあがってきて、上のほうでえらい騒ぎをしているが、なにか変ったことでも起きたのではないかとたずねた。

この二人は、揃いも揃って、もっての外の臆病もので、そのうえ年月の難儀が骨身に沁みているところだから、舵を折ったなどというと、どんな騒ぎを起すか知れぬと思い、

「これほどの大時化になれば、舟子は寝転がってもいられまい。大騒ぎはあたりまえのことだ」

と笑い流しにかかったが、寝た間も、命ばかり案じている二人のことだから、そんなことで欺されはしない。