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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
Read 釘抜藤吉捕物覚書 (くぎぬきとうきちとりものおぼえがき) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 19,251 characters · 39 screens
」
「武右衛門さんのことって、あたしは何も知りませんけれど、なんでも、みなさんと仲が悪かったようでございますよ。もう仏ですから、あしざまに言うのはなんですけれど、ほんとに、厭なお人でござんした。」
「ふうむ、どうしてまた、そんなに厭われたんで――。」
「どうしてと申して、」と、おこよはちょっと逡巡ったが、「女好きで、そのうえ、自分は大の色男のつもりで――うるさいったらないんです。」
「あの男は、今度越後の山奥とかから出て来て、ここで初めて顔が合ったんじゃあねえのかえ。」
「仲間の種を割るようですけれど、死んだ人ですから構いません。いいえ、今度はじめて出て来たどころか、いままで何年となく、上方からあちこち巡業っていた人ですよ。わたしたちも、ずいぶん方々で会いましてございます。」
「そうかい。そんなことだろうと思ってた。」
藤吉が考え込むと、おこよは、問わず語りにつづけて、
「円枝さんとも、よく旅で一座しましたが――。」
「ふうむ。その円枝さんとは、武右衛門がおめえに色眼を使うんで、たびたび鞘当てがあったことだろうの。」
おこよは、うつむいた。紋之助師匠が、すこしむっとしたような口調で、