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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
Read 釘抜藤吉捕物覚書 (くぎぬきとうきちとりものおぼえがき) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 19,251 characters · 39 screens
「あんまり詰らないことを、お訊きにならないように――。」
「あっしが訊くと思うと、腹が立つ。」藤吉は、にっこりして、
「が、役立が訊かせると思うと、こいつあどうも、腹が立ったところで、しようがねえ。まあ、師匠、そんなようなもんだ。」
「でも――、」おこよは、ぎょっとしたように、顔を上げた。
「あの時、円枝さんはずっと隣りにいて、それに、あの方は、人殺しをするような、そんな――そんな野暮ったい――。」
「親分さん――、」紋之助と話していた円枝も、向うから口を入れた。「あっしを疑うなんて、そりゃあんまりひでえや。あっしは親分――。」
「おう、そこにいたのか。まあさ、おまはんは黙っていな。」
「黙っていろも、ことによりますよ。人気商売だ。人殺しだなんて言われちゃあ――。」
客席に、笑い声が湧いて、すぐに消えた。藤吉は、再び不機嫌な表情に返って、周囲の人の顔から顔へと、無意味に見える視線を、しきりに走らせていた。
出が近づいて、紋之助とおこよは、人形を取り出して、あやつり舞台の上に、並べている。狂言は、芹生の里寺子屋の段、源蔵、戸浪、菅秀才、村の子供たち、その親多勢、玄蕃、松王――多くの、いずれも精巧を極めた人形である。