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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
Read 釘抜藤吉捕物覚書 (くぎぬきとうきちとりものおぼえがき) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 13,547 characters · 27 screens
人間四人、それを囲んで期せずしてだんまり。
「親分。」佐平次が沈黙を破った。「この犬あ今夜癇が高えようです。一つ、犯人の跡を尾けさせてみようじゃございませんか。もっとも畜類のこと、当るも当らねえも感次第でやすがね。」
「うむ。面白かんべ。そこの根っこあ誰かが据わって草加屋を待伏せしたとこ、とまあ、俺あ踏みてえんだが――嗅がせろ。」
佐平次が甚右衛門の首を掴んで、その地点へ鼻を擦りつけると、犬は万事承知して歩き出した。四人それに続いて山を出た。往来へ来ると、大声に藤吉が言った。
「彦、わりゃあ八百駒を白眼んで来い。勘、手前はな、番所叩えて人数を貰え、仏の始末だ。俺か、おいらあ甚右様々の供奴。宜えか、二人とも御苦労だが頼んだぜ。うん、落合う所か――こうっと、待てよ。」
「手前のお邸、へへへへ、たいしたお屋敷で。九尺二間、ついそこです。明石町橋詰の宗十郎店、へえ。」
「そうか。そいつあ済まねえのう。なにも御難と諦めてくんな。じゃ、借りるぜ――おうっ、勘、彦、用が済んだら佐平次どん方へ――待ってるぜ。彦、如才あるめえが八百駒あやんわりな。」
言うあいだにも遠ざかる親分乾児、裸体の二人は東西へ、藤吉佐平次は犬を追って、暴風雨のなかを三手に別れた。