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まじゅつし
魔術師
江戸川 乱歩
Read 魔術師 (まじゅつし) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,264 characters · 280 screens
一体何をする為の煉瓦であろうか。
地下室というのは六畳敷き程の狭い部屋で、天井も床も四方の壁も、古風な赤煉瓦で出来ていて、一方の壁に映写用の白布が張ってあり、器械類、簡単な椅子テーブルなどがゴチャゴチャと並んでいる。
牛原氏は小型テーブルの様な台の上に、器械を据えて、映写の準備をしていたが、それが終ると、一同を椅子にかけさせ、
「サア、始めますよ」
と云いながら、パチンと電燈を消した。
あやめも分かぬ真の闇。闇の中で、カタカタカタとクランクの音が聞えると、正面のスクリーンに、薄ボンヤリと、抜けの悪い画が動き始めた。
よく見ると、牛原氏自身の邸が背景に使われている。そこの色々な部分が、巧みに取入れられ、その背景の前で、見知らぬ登場人物が、事件の筋を運んで行く。
素人現像のボンヤリした不明瞭な画面が、一種異様の凄味となり、何かこう、恐ろしい悪夢でも見ている様な気持だ。
音楽も説明も何もない沈黙の映画。音といえばクランクの廻転ばかり。登場人物は、黙々として笑い、泣き、語っている。真のパントマイムだ。
背景は現在のこの邸だけれど、物語の時代は明治の初期らしく、人物の髪の形、衣裳の着つけなどが、古い錦絵を思出させる、古風な姿である。