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あるかんぬしのはなし

ある神主の話

田中 貢太郎

Read ある神主の話 (あるかんぬしのはなし) by 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 5,116 characters · 10 screens

Aozora Bunko

「やい、勘作さん、おまえさんのような情なしがどこにある、おまえさんはなんの怨があって、私の仕事の邪魔をした」

勘作は膳前に一本飲んでいるところであった。

「なんだ、なんのことだ」

「なんのことだ、おい勘作さん、とぼけちゃいけないよ、今日、俺が旅人の笠を飛ばして、旅人を引込んで、人間になろうとしていると、お前さんが走って来て、そこには魔者が住んでおる、入られんと云ったのを忘れたのか、おい勘作さん、忘れたとは云わせないよ」

「ああ、そのことか、そのことなら覚えている」

「だから、なんの怨みがあって、そんなことをしたかと云っているんだ、それを云ってもらおう」

「そうか、そのことか、そりゃお前さんがいけねえ、お前さんが人間になりたいと思って、他の人間を殺すのは道にはずれている、そりゃ、いくらお前さんと朋友でも、そんなことはいけねえ、それとも、お前さんは、道にはずれていると思わないのか」

「そりゃ、罪もない人間を殺すのは、ちと気の毒じゃが、それ位のことは、眼をつぶらねばいけない」

「それは己かっての理窟じゃ、そんな道にはずれたことはいけない、まあお前さんもつまらん望みを起さずに、今までどおりにつきおうて、旨い酒を飲もうじゃないか、まああがるがいい」