Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
いしがおごる
いしが奢る
山本 周五郎
Read いしが奢る (いしがおごる) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 22,304 characters · 45 screens
「いつもの癖ってなんだ」
「こういうお顔をなさるわ」
いしは唇をむすんで上へ歪めてみせた。保馬はちょっとどきっとした。自分ではその癖が出ないことには気がつかなかった。
「澄ましていらっしゃると怖いけれど」といしはあまえるように云った、「こういうお顔をなさると、それはやさしくみえて、わって云いたいくらい嬉しくなるんです」
「いしのいい人もそうするのか」
「いやですわ、どうして話しをおそらしなさいますの」
「おまえが隠してばかりいるからさ」
と保馬はいしの顔を見た。
「いしは少しもいい人のことを話さないじゃないか」
「だって関わりのないことなんですもの」
「関わりはあるさ」
保馬の声に棘があったのか、それとも自分の心に咎めたのか、いしははっとしたような眼で保馬を見た。それが保馬を逆に打った、いしに咎はない、いしは不当な役を負わされているだけだ。保馬はしいて笑ったが、歪んだ笑いだということが自分にもわかった。
「おれはいしが好きだ」と彼は云った、「いしが誰よりも仕合せであるようにと、いつも願っている、本当にそう願っているんだ、だからその人が、いしを仕合せにすることのできる人間かどうかを知りたいんだ」