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いたずらこぞうにっき

いたずら小僧日記

佐々木 邦

Read いたずら小僧日記 (いたずらこぞうにっき) by 佐々木 邦 (ささきくに) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 63,226 characters · 128 screens

Aozora Bunko

と顔を見比べてやった。

「どうれ」

と赤旦那は森川さん所の書生のような返辞をして手を出した。「手を出す心は乞食の心」と乃公が言うと、奴さん本気にして手を引込めたから、乃公は又「引込む心は河童の心」と大きな声を出した。店の者は皆笑っていた。

「冗談は止して早く見せ給え」

と止せばいいのに痣旦那は頻りに見たがるから、余り焦らして虫でも出ると悪いと思って、乃公は写真を渡してやった。是も姉さん達の悪戯で、痣が沢山拵えてある。頭の毛は赤いインキで塗ってある。裏面には「是でも申込んだのよ」と書いてある。赤旦那が青旦那に変色した頃は、乃公は干葡萄をもう一掴み貰って、外へ出て躍っていた。

片岡さんは弁護士である。事務所は新町にある。此人は度々家へ来るから乃公は能く知っている。恐ろしく声の太い人だ。事務所に入った時には何だか、胸がドキドキした。大方気怯れがしたのであろう。しかし道順だから是非寄らねばならぬ。

「今日は、今日は什見世物が厶いますか」

「何じゃ。やあ、太郎さんか」

とバリストルは新聞を置いて、乃公を見下した。荒刻の仁王を微笑ませるのも偏えにお春姉さんの威光である。