Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
おかよ
おかよ
山本 周五郎
Read おかよ by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 9,116 characters · 19 screens
弥次郎はなにも云えなかった。――己は征かずに済むだろう。そう思いながらけれどもおかよの手から御守りの包を受取った。事実その時、細川越中守は島原出陣の幕命を辞退していたのである、将軍家光からの直命であったのにかかわらず「その任に堪えず」と云って固く謝絶していたのである。
「きっとお手柄をあそばしますように」おかよは祈るように云った。「あなたは千人にぬきんでたお方です、おかよにはそれがよくわかっていました、どうかこのお札を着けていることをお忘れなさいますな、わたくしもお札といっしょにお護り申しております」
そう云いながら、つきあげてくる情熱を抑え兼ねたのであろう、おかよはよろめくようにすり寄った。あまく噎っぽい娘の匂が、弥次郎を息苦しくさせた。
「お待ち申しておりますよ」
身も心もうちこんだひたむきな愛情が、そのとき弥次郎の胸に、どのような印象を彫りつけたであろうか。
越中守忠利は重ねての幕命をうけてついに出陣の決心をした。そして正月十二日、軍勢をそろえて江戸を発した。(本軍はもちろん熊本に在った)その出陣の前日、準備で忙しいなかを弥次郎はおかよに会おうとして駈けまわった。