Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
おさん
おさん
山本 周五郎
Read おさん by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 33,128 characters · 66 screens
参太は膝の上の手をちょっと動かした。女は障子を閉めて去った。
彼はちょっと迷ってから、ふところ紙を一枚取ってひろげ、巾着の中から小粒を一つ出して包んだ。それを敷蒲団の下へ入れ、掛け夜具を捲って横になった。火鉢の火が消えていると知ってから、夜気の寒いことに気がついたのだ。夜具を顎のところまで引きよせて、参太は天床を見まもった。雨漏りの跡のある煤けた天床で、行燈の光がその一部分をぼっと明るく染めていた。――二つ三つはなれた座敷で、笑い声が聞えた。夕方に来た四五人伴れの客である。この土地の者で、なにかの寄合の崩れだとか云ったが、みんな酔っていて、ばかな声で代る代る唄をうたっていた。一刻ばかりまえから静かになり、帰ったのかと思うと、ときどき笑い声が聞えて来る。参太はすぐに「やっているな」と直感した。どうせ友達同志の一文博奕だろう、こっちは鉄火場にも出入りするからだであるが、他人のこととなると、たとえ一文博奕でも背筋へ風がはいるような、不安な、おちつかない気分におそわれるのであった。
参太は眼をつむった。向うの座敷がまたしんとなり、眼の裏におさんの姿がうかんできた。