Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

おばなさわ

おばな沢

山本 周五郎

Read おばな沢 (おばなさわ) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 22,479 characters · 45 screens

Aozora Bunko

五

自分を救って呉れるものは愛情だけである、お互いの魂のぴったり触れ合った、まじりけのない愛情。それだけはなにものにも破壊されず、死でさえも滅ぼすことができない、自分を支え自分を生かして呉れるのはそういう愛情だけである。

――そんなことも云った、全身で縋りつき、身をすり寄せるような、いじらしいともいいたい口ぶりであった。

相良から縁談が来たのは去年の春のことで、両親も兄もひじょうな乗り気だった。節子は断わった。そうして夏の末に戸田から話があると、形式的に四、五日の余裕をもらったが、実はもうゆく気持になっていた。

――戸田の孤独で淋しがりな気性は、自分でなければ理解ができないだろう。

節子は十五夜の酒宴のときからそう思っていた。彼を支え、彼を励まし、彼を愛情で包み、生きるちからを与えてやるのは、自分を措いてほかにはない。そう思っていたのである。兄の泰馬はあたまから反対で、おまえは黒と白の見わけもつかない盲人だ、などという失礼なことまで云った。

五

兄は戸田がなぜいけないか、という理由は云わなかった。云う根拠もなかった。友達ならいいが、妹を嫁に遣る人間ではない。