Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

おりつとこらと

お律と子等と

芥川 竜之介

Read お律と子等と (おりつとこらと) by Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 25,195 characters · 51 screens

Aozora Bunko

だがちっとは長びくだろうし、床上げの時分は暑かろうな。こいつは一つ赤飯の代りに、氷あずきでも配る事にするか。」

賢造の冗談をきっかけに、慎太郎は膝をついたまま、そっと母の側を引き下ろうとした。すると母は彼の顔へ、突然不審そうな眼をやりながら、

「演説? どこに今夜演説があるの?」と云った。

彼はさすがにぎょっとして、救いを請うように父の方を見た。

「演説なんぞありゃしないよ。どこにもそんな物はないんだからね、今夜はゆっくり寝た方が好いよ。」

賢造はお律をなだめると同時に、ちらりと慎太郎の方へ眼くばせをした。慎太郎は早速膝を擡げて、明るい電燈に照らされた、隣の茶の間へ帰って来た。

茶の間にはやはり姉や洋一が、叔母とひそひそ話していた。それが彼の姿を見ると、皆一度に顔を挙げながら、何か病室の消息を尋ねるような表情をした。が、慎太郎は口を噤んだなり、不相変冷やかな眼つきをして、もとの座蒲団の上にあぐらをかいた。

「何の用だって?」

まっさきに沈黙を破ったのは、今も襟に顋を埋めた、顔色の好くないお絹だった。

「何でもなかった。」

「じゃきっとお母さんは、慎ちゃんの顔がただ見たかったのよ。