Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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おみつかんざし

お美津簪

山本 周五郎

Read お美津簪 (おみつかんざし) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 13,158 characters · 26 screens

Aozora Bunko

七

「是を持って行け」

ばたりと投げ出した。

「え?――」

「貴様に遣るのではない、長崎で待っているお袋さんに遣るのだ、……お美津は今夜、小梅の越後屋の寮に長唄の納めざらいがあって出掛けたが、もうそろそろ帰る時分だ、彼女にだけは貴様のその姿を見せたくない――それを持って早く出て行け」

正吉は無言で金包を押戴いた。

「長崎は暖い土地だ、生れ変った気で養生をしてみろ。そして一度でも宜い、人間らしくなった姿を見せてやってくれ」

誰に見せろとは云わなかった、――正吉は歯を食いしばって嗚咽を忍んだ。

茂兵衛は裏木戸まで送って来て、印入りの提灯を与えた。――追われる身には何よりの贈物である。正吉は無言で受取り、千万の言葉を籠めた会釈を……たった一度。よろめく足を踏みしめ踏みしめ、凩の中を両国の方へ――。

七

「おや、おめえさんまた来たのか」

さっきの居酒屋だった。

「今度は良いのを頼むぜ」

正吉は悲しげな微笑を浮べて云った。

「このまま会えるかどうか分らねえ親方に、商売物の酒を奢られっ放しじゃあ気が済まねえ、――それに祝って貰いてえ事もある」

「何か良い目でも出たのかい」

「おらあ明日の朝長崎へ帰るんだ」