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こまどりとさけ
こまどりと酒
小川 未明
Read こまどりと酒 (こまどりとさけ) by 小川 未明 (おがわみめい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 5,462 characters · 11 screens
こまどりは、おじいさんのところへきたのを、うれしがるように見えました。そして、その明くる日からいい声を出して、鳴いたのであります。
おじいさんは、このこまどりの鳴き声を聞きつけたら、いまにも酒屋の小僧が飛んでくるだろうと思いました。
寒い、さびしかった、永い冬も、もうやがて逝こうとしていたのであります。たとえ吹雪はしても、空の色に、はや、春らしい雲が、晩方などに見られることがありました。
「もう、じきに春になるのだ。」と、おじいさんは思いました。
山から、いろいろの小鳥が、里に出てくるようになりました。日の光は、一日ましに強くなって、空に高く輝いてきました。おじいさんは、こまどりのかごをひなたに出してやると、さも広々とした大空の色をなつかしむように、こまどりはくびを傾けて、止まり木にとまって、じっとしていました。
「ああ、もう春だ。これからは、そうたいした吹雪もないだろう。昔は広い大空を飛んでいたものを、一生こんな狭いかごの中に入れておくのはかわいそうだ。おまえは、かごから外へ出たいか?」と、おじいさんは、こまどりに向かっていっていました。
こまどりは、しきりに、外の世界に憧れていました。