Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
さかずきのりんね
さかずきの輪廻
小川 未明
Read さかずきの輪廻 (さかずきのりんね) by 小川 未明 (おがわみめい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 10,603 characters · 21 screens
彼は、東京へ出てから、なにかたしになるであろうと、思ったのでした。
彼は、東京へきてから、ある素人家の二階に間借りをしました。そして、昼間は役所へつとめて、夜は、夜学に通ったのであります。あるとき、彼は、書物を買うのに、すこし余分の金が入用でありました。そのとき、ふと、国を出る時分に、荷物の中へ入れて持ってきた金銀の細工物とさかずきのまだ、売らずにあったことを思いつきました。
「どうせ、あのたばこ入れの飾りや、帯止めの銀の金具は、たいした値にもならないだろうが、もしあのさかずきが、いいさかずきであったなら、値になるかもしれない。しかし、いつかおじいさんに見せたら、あまりほめていなかった。それでも、みんな一まとめにして売ったら、いくらかの金になるだろう。」と、彼は思いました。
孫は、東京へ出ると、じきに掛け物は売ってしまったのです。
「いくら、本物でも、作のできがよくなければ、値になるものではありません。これは、作のできがよくありません。このほうは、汚れていますからだめです。これですか、こいつは、私に、鑑定がつきません……。」
そんなふうに、骨董屋から、まことしやかにいわれて、掛け物は、安い値で手放してしまいました。