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『てっぽうさへいじ』ついでにもひとつ
たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集【底本画像有】
佐藤 春夫
Read たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集【底本画像有】 (『てっぽうさへいじ』ついでにもひとつ) by 佐藤 春夫 (さとうはるお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 23,182 characters · 48 screens
(三)
それで話が面倒になったら事実が事実だからいくらでも訂正の余地もあったものを。
何しろ、あまり意外な出方だったうえに話は思いがけない方へ思いがけない方へと持って行かれて、すっかりドギモを抜かれた形はどこまでも間が抜けていた。
わたくしはぼんやりした自分を口惜しがりながらも、どうしても腑に落ちないあの電話が奇妙にわたくしの興味をそそるのをおぼえて、その正体をつかまえたいと思いつづけていた。
ところが道灌山の「わたくしの神さんの姉さん」は、あの時のわたくしの電話で、義弟にはすっかり愛想を尽かしてしまったものとみえて、それっきり二度とふたたびは何の音沙汰もなくなってしまった。
(三)
この妙な電話の後、一年だか、二年だか、三年だか、そのへんがどうも明確でなくなっているのだが、何にせよ、あの電話の印象が、まだそれほどにぼやけてしまってはいなかったから、精々のところ三年かと思う。
その三年の間に、わたくしは別にそんな不可解な姉さんのある女だから疎んじたというわけでもなく、性格の不調和が日毎に目立って来たのに気がついてその女は去った。
或る晩秋初冬の一日、寒冷前線の通過でもあったのか、うすぐもりの朝から底冷えがしてひる過ぎには時雨が降り出してだんだんと雨脚はしげく、まだ三時すぎと思うのに夕方近くのように暗いなかで電燈を