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だだらだんべえ
だだら団兵衛
山本 周五郎
Read だだら団兵衛 (だだらだんべえ) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 12,271 characters · 25 screens
一
一
雨もよいの生温い風が吹いている。
ここは鈴鹿峠の裏道、俗に三本榧と呼ばれて、巨きな榧の木が三本、のんと立っている峠の八合目近くだ。
とっぷり暮れた暗い夜道を、足早に登って来る一人の侍がある。六尺たっぷりという身丈に、三尺余る無反の強刀を横へ、急ぎの旅で夜行するらしく、とっとっと三本榧までやって来た。すると――ふいに傍の雑木林の中から、ばらばらと十四五名の荒くれ男がとび出して来て、
「待て待て、侍待て!」
と行手へ立塞がった。足をとめた侍が、
「何だ」
と見やると、いずれも刀槍をひらめかした屈強の者ども、素性は云わずと知れている。
「拙者に何か用か」
「古いせりふだが用があるから止めたのよ、ここは鈴鹿の裏抜で、大蛇嶽闇右衛門様のお繩張内だ、峠を越す切手代りに、身ぐるみ脱いで献上しろ!」
凄味をつけて罵りたてた。
「大蛇嶽とは何者だな」
侍はべつに驚いたようすもない。
「鈴鹿の裏を抜けるにおれ様の名を知らぬとは迂濶なやつだ、大蛇嶽闇右衛門とは、山城、大和、伊賀、近江きっての山賊様よ!」
「山賊か」
と侍は頷いて、
「それは困った、拙者いま急用で先を急ぐのだ、幸い金子を二十両持っているが、これをやるから勘弁してくれぬか」