Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
みさごのすし
みさごの鮨
泉 鏡花
Read みさごの鮨 (みさごのすし) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 23,198 characters · 47 screens
中脊で、もの柔かな女の、房り結った島田が縺れて、おっとりした下ぶくれの頬にかかったのも、もの可哀で気の毒であった。が、用を言うと、「はい、」と背後むきに、戸棚へ立った時は、目を圧えた手を離して、すらりとなったが、半紙を抽出して、立返る頭髪も量そうに褄さきの運びとともに、またうなだれて、堪兼ねた涙が、白く咲いた山茶花に霜の白粉の溶けるばかり、はらはらと落つるのを、うっかり紙にうけて、……はっと思ったらしい。……その拍子に、顔をかくすと、なお濡れた。
うっかり渡そうとして、「まあ、」と気づいたらしく、「あれ、取換えますから、」――「いや、宜しい。……」
懐中へ取って、ずっと出た。が、店を立離れてから、思うと、あの、しおらしい女の涙ならば、この袂に受けよう。口紅の色は残らぬが、瞳の影とともに玉を包んだ半紙はここにある。――ちょっとは返事をしなかったのもそのせいだろう。不思議な処へ行合せた、と思ううちに、いや、しかし、白い山茶花のその花片に、日の片あたりが淡くさすように、目が腫ぼったく、殊に圧えた方の瞼の赤かったのは、煩らっているのかも知れない。あるいは急に埃などが飛込んだ場合で、その痛みに泣いていたのかも分らない。