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エマヌエル・カント『しぜんてつがくげんり』かいせつ
エマヌエル・カント『自然哲学原理』解説
戸坂 潤
Read エマヌエル・カント『自然哲学原理』解説 (エマヌエル・カント『しぜんてつがくげんり』かいせつ) by 戸坂 潤 (とさかじゅん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 36,570 characters · 72 screens
に外ならない。
吾々は已に経験界の対象を総括して自然と呼んだが、経験界の対象は外的直観に基くか又は内的直観に基くかでなければならない。前者に関する認識は物体論即ち物理学であり、後者に関する認識は心理学である。処が合理的(純粋)心理学はカントが説く処に従えば不可能である。故に純粋自然科学はただ純粋なる物体論、即ち形而上学的物体論だけとならねばならぬ。経験的物体論としての(否それは実験論とすら云うことは出来ない)化学、又経験的でしかあり得ない心理学、は形而上学的物体論と同じ位階に並ぶことは出来ない。その何れにも数学が応用され得ないからである。そしてかく云われるのもカント時代の化学と心理学との状態を以てすれば已むを得なかったことであろう。
さてすでに明らかとなっている通り、カントの自然哲学は物の存在を予想していた筈である。空間内に於ける存在、即ち物体界の恒存者なる実体は物質である。それ故第一に自然の形而上学の問題は、物質に就いて純粋悟性を通じて認識し得るものは何であるか、である。処が物質はただその表われ方現象の仕方に於て認識されるの外はない、そして現象とは実体の変容である。