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ボロやのしゅんじゅう
ボロ家の春秋
梅崎 春生
Read ボロ家の春秋 (ボロやのしゅんじゅう) by 梅崎 春生 (うめざきはるお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 129,411 characters · 263 screens
「虫が出たんだろ。虫が出たんなら、結果としては、君の幸福になったわけじゃないか」
「幸福とか不幸とかに、これは全然関係ない――」と僕は怒鳴った。「君は僕の意志をふみにじっている。基本的人権の問題だ」
「じゃ君は、体内に蛔虫を飼っておきたいとでも言うのか」
「そんな質問に答える必要は認めない。とにかく僕を元の状態にしてかえせ」
「だって君の顔色が悪いし、疲れてるようだったから、蛔虫の駆除を――」
「そんな言い分が通るんだったら、僕は君が眠ってる時に、安全カミソリの刃で、君の疣を全部削り落すぞ!」
野呂はとたんに真赤になって、顎の疣に掌をあてました。ははあ、イボのことを言われるとこの男は反応を起すんだな。そう僕は思った。野呂の声は急に押しつぶされたようになりました。
「じゃ、どうすりゃいいんだい。元の身体にしてかえせって――」
そこで僕は怒りを静めあれこれ考えた揚句、向う一箇月毎日レタスを一株僕に提供すること、それも野呂菜園のは虫の卵がないから八百屋より買い求めること、その条件で許すことにしました。野呂はしきりに一箇月を半月に値切って来たが、僕は頑として受けつけなかった。