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ちゅうごくかいきしょうせつしゅう
中国怪奇小説集
岡本 綺堂
Read 中国怪奇小説集 (ちゅうごくかいきしょうせつしゅう) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 179,458 characters · 363 screens
かつて南中に遊ぶ人があって、日盛りを歩いて林の下に休んでいる時、二尺ばかりの青い蛇を見たので、たわむれに杖をもって撃つと、蛇はそのまま立ち去った。旅びとはそれから何だか体の工合いがよくないように感じられた。
その晩の宿に着くと、旅舎の主人が怪しんで訊いた。
「あなたの面には毒気があらわれているようですが、どうかなさいましたか」
旅人はぼんやりして、なんだか判らなかった。
「きょうの道中にどんな事がありましたか」と、主人はまた訊いた。
旅人はありのままに答えると、主人はうなずいた。
「それはいわゆる『報寃蛇』です。人がそれに手出しをすれば、百里の遠くまでも追って来て、かならず其の人の心を噬みます。その蛇は今夜きっと来るでしょう」
旅人は懼れて救いを求めると、主人は承知して、龕のなかに供えてある竹筒を取り出し、押し頂いて彼に授けた。
「構わないから唯これを枕もとにお置きなさい。夜通し燈火をつけて、寝た振りをして待っていて、物音がきこえたらこの筒をお明けなさい」
その通りにして待っていると、果たして夜半に家根瓦のあいだで物音がきこえて、やがて何物か几の上に堕ちて来た。