Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

Read 丹下左膳 (たんげさぜん) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 340,187 characters · 666 screens

Aozora Bunko

泰軒があぶない! と見て踏み出した栄三郎も、眼前に立ち現われたこの侍の相形には、思わず愕然として呼吸を切った。

正規の火事装束――それもはっきりと真新しく、しかるべき由緒を思わせる着こなし。

それが抜き放った大刀をじっと下目につけたまま、栄三郎の気のゆえか、どうやら角頭巾の下から眼を笑わせているようだが、剣構品位尋常でなく、この場合、おのずと立ち向かった栄三郎、何やらゾクッ! と不気味でならなかった。

なに奴?

地からせり上がったか、それとも闇黒が凝ったか――とにかく、鈴川邸内の者とは見えない。

とすれば?

駈けつけた敵の助勢であろうか、それにしても、このものものしい火事場の身固めと、なんとなく迫ってくる威圧、倨傲の感とは、なんとしたことだ……。

刀をつけながらも、不審にたえない栄三郎が、さまざまに思い惑って、ちらとそばのやみに眼をくばると、ふしぎ! にも落ち残った葉を雨にたれた木立ちのかげに、同じ装束の四、五人がそれぞれ手を柄頭に整然とひかえている。

通りがかりか、ないしは志あってか、この一団の火事装束、いま血戦の最中にこっそり邸内に忍び入って来たものに相違ない。