Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
Read 丹下左膳 (たんげさぜん) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 340,187 characters · 666 screens
しいて言えば、名のない男というのが名かな」
「なるほど。いや、これはおもしろい。しからばこの金子、このまま貴殿へお渡し申そう」
あきらめたとみえて、源十郎もあっさりしている。財布は男の手へ移った。
「ふん! あんまりおもしろいこともあるまいが……政事を私し、民をしぼる大盗徳川の犬だけあって、放火盗賊あらためお役が、賊をはたらく、このほうがよっぽどおもしろいぞ」
この毒舌に源十郎はかっとなって、
「乞食の身で、言わせておけば限りがない――汝は金を返してやるといったが、さてはあの若侍の住所氏名を知っているのか」
「知らん。が、いずれ今ここへ帰ってくるだろう」と、名のない男の言葉が終わらないうちに、裏みちでつづみの与吉を見失った諏訪栄三郎が、ぼんやりとそこの横町から往来へ出て来た。
思案投げ首といった態。
それを見ると男は、源十郎がはっとするまに大きな声で呼びかけて、ちらりと源十郎を見やったのち、近づいてくる栄三郎へ、
「これ! 金はここにある。この八丁堀のお役人が、あの男をとっちめて取り戻してくだすったのだ。礼はこの人へ言うがいい」
と見事に源十郎を立てておいて財布を栄三郎に渡すが早いか、まごついている二人を残して、それなり風のように立ち去って行った……頭髪へ銀杏の葉をのせて、片手に徳利をさげたまんまで。