Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
Read 二つの庭 (ふたつのにわ) by 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 195,492 characters · 389 screens
その布地は、ひどく伸子の気に入り、さっぱりした薄紫にそめて着た。あとで、それを黒にして、いまもその羽織は愛用している。その反物をくれたのは、藤堂駿平の母で、七十になっていても、本をよむのを日課にしているという老夫人だった。伸子は、その御礼のことで多計代といいあらそったのを覚えている。多計代は折角もらったものだから、着物にして着てよく似合うところを見せに行くべきだといい、伸子は、そんなことはいやだ、とあらそった。
「お母様、もしこの反物を、ほかのどっかのおばあさんがくれたとしても、やっぱりそうおっしゃる? 藤堂駿平が男爵でなくても、そんなにおっしゃる?」
伸子は、
「そんなにむずかしいものなら、着ない」
そう云って、本当にそれが仕立てあがった冬は着なかった。
藤堂駿平と佐々泰造とは、公式なつき合いばかりでない交際があるらしいことも、伸子は思い出したのであった。
「わたし、ちょっときいて来てみる」
伸子は、郊外電車の停留場のわきにある酒屋から、佐々の事務所に電話した。
勢いこんでかえって来て、伸子はすぐに縁側にまわった。
「よかった! 何とか考えましょうって――今来るようにって……」