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しつらくえんさつじんじけん
二十世紀鉄仮面
小栗 虫太郎
Read 二十世紀鉄仮面 (しつらくえんさつじんじけん) by 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 38,489 characters · 77 screens
寧ろ憎々しい迄に冷静を極めている。法水は丁重に弔意を述べた後で、まず昨夜の行動を訊ねた。
「ハァ、午後からずうっと茶の間に居りましたが、多分七時半頃で御座いましたでしょう。主人が雪駄を突掛けて出て行った様子で御座いましたが、程なく戻って来て、薬師堂で祈祷すると云い、慈昶を連れて出掛けましたのです」
「では、あの雪駄が※(感嘆符疑問符、1-8-78) すると、一端戻って来てから履いたのが日和なんですね」熊城は吃驚して叫んだ。てっきり犯人の足跡と呑み込んで、深く訊しもしなかった雪駄の跡が住持のものだとすると、一体犯人は、如何なる方法に依って足跡を消したのだろうか? それとも、接近せずに目的を果し得る兇器があったのだろうか? 然し、法水は更に動じた気色を見せなかった。
「ハハハハ熊城君、多分この矛盾は、間もなく判る筈だよ。それから奥さん、その時御主人の様子に、何か平生と変った点があったのをお気付きになりませんでしたか?」
「ハァ、別に最近の主人と変ったような所は御座いませんでしたが、どうした訳か、空闥さんの日和を履いてしまったので御座います。それから十五分程経って、慈昶が戻ったらしい咳払いを聴きましたけれども、空闥さんはその時、本堂脇の室で檀家の者と葬儀の相談をしていた様子で御座いました。