Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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にじゅうしのひとみ

二十四の瞳

壺井 栄

Read 二十四の瞳 (にじゅうしのひとみ) by 壺井 栄 (つぼいさかえ) in Japanese with furigana. JLPT N3. Tap a word for the meaning.

N3 · intermediate · modern kanji and kana · 113,429 characters · 227 screens

Aozora Bunko

お気のどくといいそうになってあわててやめた。後藤先生こそ、どうしてかようだろうとあんじられたのだ。もうすぐ四十で、しかも晩婚の後藤先生には乳呑み子があった。じぶんよりは少し岬へ近い村の人とはいえ、一里半(六キロ)はあるであろう岬へ、寒さにむかってどうしてかようだろうかと思うと、その気のどくさと、じぶんの心残りとがごっちゃになって、急に眉をあげた。

「では、校長先生、こうしていただけませんでしょうか。わたしの足がすっかりなおりましたら、いつでも代りますから。それまで後藤先生にお願いすることにして……」

いかにもよい思いつきだと思ったのだが、校長先生の返事は思いがけなかった。

「義理がたいこというなあ、久子さん。あんたがそないに気をつかわんでも、ちょうどよかったんだから。後藤先生は、すすんで岬を希望したんだから」

「あら、どうしてですの?」

「いろいろ、あってね。老朽で来年はやめてもらう番になっていたところを、岬へいけば、三年ぐらいのびるからね。そういったら、よろこんで、承知しましたよ」

「まあ、老朽!」

三十八や九で老朽とは? まだ乳呑み子をかかえている女が老朽とは。