Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

にはいじん

二癈人

江戸川 乱歩

Read 二癈人 (にはいじん) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 11,388 characters · 23 screens

Aozora Bunko

それは私が木村氏自身でない以上どうも分り様がありませんが、そこにはきっと云うに云われぬ深い訳があった事でしょう。例えば、そうですね、敵討といった様な……」

真青になった井原氏の顔色に気附くと、斎藤氏はふと話をやめて、何事かを虞れる様にうなだれた。

二人はそうしたまま長い間対座していた。冬の日は暮るるに早く、障子の日影も薄れて、部屋の中にはうそ寒い空気が漂い出していた。

やがて、斎藤氏は恐る恐る挨拶をすると、逃げる様に帰って行った。井原氏はそれを見送ろうともしなかった。彼は元の場所に坐ったまま、込み上げて来る忿怒をじっと圧えつけていた。思掛けぬ発見に思慮を失うまいとして全力を尽していた。

併し時が経つにつれて、彼のすさまじい顔色が段々元に復して行った。そして、遂に苦い苦い笑が彼の口辺に漂うのだった。

「顔かたちこそまるで変っているが、あいつは、あいつは……だが仮令あの男が木村自身だったとしても、俺は何を証拠に復讐しようというのだ。俺という愚かものは、手も足も出ないで、あの男の手前勝手な憐憫を有難く頂戴するばかりじゃないか」

井原氏は、つくづく自分の愚かさが分った様な気がした。