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ごがつのそら
五月の空
宮本 百合子
Read 五月の空 (ごがつのそら) by 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 5,361 characters · 12 screens
又は、輝やいた日の午後
北向の障子の棧が
単純な 日本の四角を浮上らせる傍に。
八畳の 部屋に入り
縁に出ようと 机のわきを過る時
ちらりと見る お前の姿は
何と云う楽しさだろう。
私は、十九の恋人のように
そっと眼の隅から、お前を見
思い切れずに 再 見なおし
終には 牽かれて その前に腰を下して仕舞う。
あかず眺め、眺め
心は故郷に戻ったような安息を覚えるのだ。
ああ、わが愛らしい原稿紙
いつも、お前の 懐しい乳白色の面の上に
穏やかに遮られた北の日光を漂わせよ
夜は、麗わしい台ランプの
穏密な緑色のかげを落して
われとともに
うたい、なげき、悦びにおどれ。
愛らしい 愛らしい わたしの
原稿紙。
同じ題
何と云う すなおな心を持つお前か
私が泣けば、お前の面も曇らずには居ない。
私が歓びに打ち震え 見つめれば
おなじ悦びに 眼を瞠り 微笑む。
夜のとも
昼のとも そして わが一生の友、原稿紙。
一ひら 一ひら、お前を、
市井の文具店の蔵から迎えよせ
私の周囲には、次第に多くのまといが出来た。
それ等の声に耳を傾け
私も亦 人に洩れぬ 私語で 物語り
見えぬ友情
絶ち難い 愛が 二人の胸を繋ぐ。
私は、此一生を